プランクトンとは?

プランクトンとはどのような生物のことでしょうか.恐らく,多くの人は「水中に生息している小さな生物」という認識はあると思いますが,具体的にはどういった生物であるかと聞かれると説明できる人は少ないと思います.プランクトンの語源は,ギリシヤ語の「プランクトス」に由来しており,「さまよい歩くもの」という意味があります.つまり,プランクトンとは,遊泳能力が小さいため,「水の流れに逆らって泳ぐことの出来ない生物」のことを指します.よって,生物の大きさは関係ありません.

しかし,水の流れに逆らうことの出来ない生物というのは,基本的には小さな生物です.殆どの場合,プランクトンの大きさは,大きいもので,50 mm程度(オキアミなど)ですが,さらに大きいプランクトンも存在します.それはクラゲです.クラゲは,傘の直径が数ミリメートルほどのエダアシクラゲから1メートルほどにも成長するエチゼンクラゲがおりますが,いずれも遊泳能力が小さいため,プランクトンとして扱われます.

プランクトンは,大きく分けて,植物プランクトンと動物プランクトンに分けることが出来ます(ここでは,バクテリアとウィルスは考えない).植物プランクトンは,光合成能力を有している(光独立栄養性)プランクトンのことを指し,動物プランクトンとは,他の生物を補食する事によってエネルギーを獲得している(従属栄養性)プランクトンのことを指します.一般的に,植物プランクトンの大きさは,動物プランクトンより小さく,動物プランクトンは,植物プランクトンを捕食して生命を維持しています.

陸上生態系において,食物連鎖の底辺を支えているのは植物です.このことは,海洋においても同じです.海洋の植物といえば,ワカメ,コンブなどの海藻類が直ぐに思い出されますが,これらの目に見えるような植物が担っている有機物生産力は,海洋全体の僅か2%以下であると考えられています.驚くべきことに,残りの98%は,植物プランクトンによって支えられていると考えられています.このことは,目に見えない植物プランクトンが,海洋生態系の基盤となり,ほぼ全ての海洋生物を支えていることを意味しています.また,動物プランクトンは,より高次の食物段階に位置する生物へのエネルギー輸送(食う食われるの関係)や,海洋深層への有機物輸送といった点で重要な役割を担っています.例えば,魚類は微小な植物プランクトンを餌として直接捕食することができません.これを人間に置き換えると,大気中に漂うPM2.5の微粒子(植物プランクトンに相当)を食べようとしているようなものです.よって,動物プランクトンが植物プランクトンを補食し,自らが魚類の餌となることで,高次栄養段階生物に効率良くエネルギーが輸送されているのです.